透析患者さんの食事管理では、カリウムの摂取量を制限される場合があります。カリウムは水溶性のため、「水にさらす」「茹でこぼす」などの調理の工夫で、食材中に含まれているカリウムを10〜50%程度減らすことができるといわれています。
本記事では、食材の種類や料理ごとに具体的な手順や間違えやすいポイントを解説。さらに、カリウム制限があっても、毎日の食事管理の負担を軽減する方法をご紹介します。
この記事でわかること
- カリウム抜きの基本となる「水さらし」「茹でこぼし」の正しい手順
- 食材別・下処理のポイント、調理のコツと間違えやすい注意点
- 毎日の食事づくりの負担を軽減する工夫と「透析弁当」の活用方法
目次
透析患者さんが食事管理でカリウム制限する理由
透析患者さんの食事では、カリウムの摂取量に配慮する必要があります。
腎臓が健康な状態であれば、食事から取り入れた余分なカリウムは、尿とともに体外へ排出されます。しかし、透析治療を受けている方の場合は、腎臓の働きが低下しているため、摂取したカリウムがうまく排出できずに体内に溜まりやすくなります。
カリウムが過剰に溜まり、血中の濃度が高くなりすぎると「高カリウム血症」と呼ばれ、手足のしびれや不整脈、重症化すると心停止に至ることもあり、注意が必要です。
そのため、日々の食事でカリウムの摂取量を適切に調整することが大切です。日本透析医学会のガイドラインでは、透析患者さんの1日あたりのカリウム摂取量は2,000mg以下(血液透析の場合)※1が目安として示されています。
カリウムは、肉や魚をはじめさまざまな食品中に存在し、特に生の野菜や果物に多く含まれています。エネルギーやたんぱく質をしっかり確保するためには肉や魚が欠かせませんし、野菜や果物には食物繊維・ビタミン・ミネラルも豊富に含まれます。
カリウムが多いからといって極端に避けるのではなく、調理の工夫でカリウムの量をコントロールしつつ、バランスよく適量を食べることが大切です。
詳しいカリウム制限の理由や食品選びについては、「透析治療中のカリウム管理|野菜・果物を楽しむ工夫と注意点」で詳しく紹介しています。
※必要な栄養量は個々の状況により異なります。担当の医師・管理栄養士にご相談ください。
食材からカリウムを抜く方法と減少率の目安

カリウムは「水に溶けやすい(水溶性)」という性質を持っています。この性質を利用し、調理の工夫で食材中のカリウムを減らすことができます。
小さく切る
効率よくカリウムを抜くための下準備として、食材を小さく切っておきましょう。
細切り・薄切りなど、小さく切ることで表面積を大きくしてから、水にさらす、茹でこぼす、といった工程に進みます。
火の通りも早くなり、調理時間の短縮にもつながります。
水にさらす
サラダや和え物など、生野菜を食べる際は、水にさらすことでカリウムが食材の細胞内から水中に溶け出します。
食材の種類や切り方、さらす水の量や時間によって異なりますが、約10〜40%程度のカリウムが減少するといわれています。
たっぷりの水にさらした後、ザルにあげ、しっかりと水気を切ります。
長時間さらしすぎるとビタミンCなどの水溶性ビタミンや食材の旨味も一緒に流れ出てしまいます。カリウム除去の効果と栄養・風味の損失のバランスを考えると、30〜60分を目安にするとよいでしょう。
茹でこぼす
食材をたっぷりのお湯で茹で、茹で汁は捨てる調理法です。
お浸し、煮物やカレーなどの煮込み料理、汁物、炒め物なども、一度別の鍋で下茹でとして材料を茹でこぼすのが基本です。茹でこぼした後で、別に用意した出汁やスープに加えて煮たり、炒めたり、味付けをしたりして仕上げます。
熱を加えることで食材の細胞が壊れやすくなり、より多くのカリウムが溶け出すため、食材によって約30〜50%程度と、水さらしよりも多くのカリウムを減らせます。
少量の水で蒸し茹でにせず、多めのお湯を使いましょう。
食材別・カリウム抜きのポイント

食材の特性によって適した処理方法は異なります。ここでは食材別にカリウムを上手に減らすためのポイントについて解説します。
葉物野菜(ほうれん草、小松菜、キャベツ)
葉物野菜はカリウムを多く含みますが、茹でることで抜けやすい特徴があります。あらかじめ切り、たっぷりのお湯で茹でた後、冷水に取ってペーパータオルで表面の水気を拭き取ります。
絞った際に出る水分にもカリウムが含まれるため、しっかり水気を切りましょう。
根菜類・芋類(大根、人参、じゃがいも)
組織がしっかりしているため、水さらしでは十分にカリウムが抜けません。
薄いいちょう切りや短冊切り、細切りなど小さく切ってから、たっぷりのお湯で茹でこぼすのが基本です。いも類・かぼちゃ・豆類は、茹でこぼしても他の野菜に比べてカリウムが抜けにくいため、食べる量に注意しましょう。
肉・魚
肉は薄切りにして茹でこぼしてから、炒め物や煮物に使います。魚も湯通しした後で煮付けたり、フライにしたりするとよいでしょう。
茹で過ぎるとパサついてしまうため、さっと湯通しする程度にします。オリーブオイルやごま油を使った調理ならコクが出るうえにエネルギーも補えます。
果物
生のまま食べる場合は、種類や量で調整します。カリウムが多いバナナやメロンは控えめにし、比較的カリウムが少ないリンゴやミカンを選ぶとよいでしょう。
缶詰を利用するのも一つの方法です。缶詰のシロップにはカリウムが溶け出しているため、シロップは捨てて果肉だけを食べます。
水さらしや茹でこぼした後、水と砂糖で煮てコンポートにしたり、バターと砂糖でソテーにしたりしても美味しく食べられます。
カリウムを減らして美味しく食べる、調理の具体的なコツ

料理ごとの具体的な調理手順と、失われやすい旨味を補う工夫をご紹介します。さらに、カリウム抜きで間違えやすい点についてもまとめました。
生野菜・サラダ
- 細切り、薄切りにする
- 食材が泳ぐ程度の水(食材の5倍くらいが目安)に30〜60分さらす
※途中で一度水を替えるとよい - ザルにあげ十分に水気を切る
途中で一度新しい水に入れ替えると、水中のカリウム濃度が下がり、さらに抜けやすくなります。
生野菜は食べる量にも気を付けましょう。茹でて温野菜サラダにするのもおすすめです。
お浸し・和え物
- 小さく切る
- 食材がしっかり浸かる多めのお湯(食材の5倍くらいが目安)で茹でる
- 茹で汁を捨て、冷水に取り、しっかり絞る
軽く水洗いしてからしっかりと絞ることで、表面に残ったカリウムを含む水分も取り除けます。
茹でる際に旨味も流出してしまうことがあるため、鰹節やごまなどで風味を補うと物足りなさを感じずに楽しめます。
炒め物
- 小さく切る
- 下茹でする
- 茹で汁は捨て、水気をしっかり切り、さっと炒める
豚肉や牛肉は薄いスライスや小間切れを使い、鶏肉は小さめに切って、さっと湯通しします。野菜は葉物なら小さく切り、根菜類は細切りや薄いいちょう切り・短冊切りにし、火が通るまで下茹でします。
下茹でで食材に火は通っているため、炒めるときは強火で短時間で仕上げます。
煮物・汁物・カレーやシチューなど煮込み料理
- 小さく切る
- 野菜や芋類を別の鍋で下茹でする
- 茹で汁は捨て、新しいだしや煮汁に加えて仕上げる
肉は薄切りや小間、小さく切ったものを下茹でして使います。いも類、人参などの根菜類はいちょう切りなど小さく切って下茹でします。
茹で汁は捨て、煮汁は別で用意しておきましょう。
カリウム抜きで間違えやすい注意点
・野菜を丸ごと水に浸す
小さく切って表面積を増やすことで、カリウムが抜けやすくなります。
・茹で汁を煮物やスープに使う
茹で汁には食材から出たカリウムが含まれるため、料理には使わずに捨てましょう。
・電子レンジや蒸し調理を茹でこぼしと同じと考える
電子レンジや蒸し調理は、あまりカリウムを水に溶かし出せずに食材の中に残ります。水を介して茹でこぼした方がカリウムを多く減らせます。
・下処理をすれば量を気にしなくてよいと考える
水さらしや茹でこぼしで減らせるカリウムは、約10〜50%程度です。カリウムを多く含む食品は、食べる量にも気を付けましょう。
毎日のカリウム制限や食事管理の負担を軽くする方法
毎食カリウムを気にしながら調理するのは、負担を感じることもあると思います。忙しい時や疲れた時でも食事管理を続けられるよう、心を軽くする考え方や、上手に手間を省く方法を知りましょう。
下処理の手間を減らす調理の工夫
・数食分をまとめて下処理する
週末や時間のある時に、野菜をまとめて切って茹でこぼし、1回分ずつ分けて冷凍しておくと、ふだんの食事づくりが少し楽になります。
・下処理済みの食材を利用する
水煮や冷凍の野菜、缶詰などを活用するのもおすすめです。
毎食すべてを手作りしない
・作り置きする
和え物や煮物など日持ちのするものを作り置きしておくと、毎食「何品も作らなければ」と気負うことなく、バランスのよい食事を楽しむことができます。
・惣菜や外食を利用する
料理に費やす時間や気力がないときは、できあいの惣菜やレトルト食品を活用したり、外食に頼るのも手です。
外食時の食事の選び方や注意点については、「透析中の外食で気をつけたいポイント」で詳しく紹介しています。
「透析弁当」を活用するという選択
透析患者さん向けに調整されたお弁当の宅配サービスを利用する方法もあります。
メディクックの透析弁当は、管理栄養士が透析患者さん向けに栄養成分を計算し設計した、自宅に届く冷凍弁当です。
エネルギー・たんぱく質はしっかり摂りつつ、カリウムとリン・塩分・水分は「慢性透析患者の食事療法基準」を基に1食当たりの成分値を調整。主菜1品と副菜2品が揃ったバランスのよい献立を、90種類以上豊富にご用意しています。
まとめ
調理でカリウムを上手に減らすには「小さく切る」「水にさらす」「茹でこぼす」の3つの工程が基本です。使う食材や作る料理ごとに適した方法で処理しましょう。「茹で汁は捨てる」など、ポイントを押さえておくと効率よくカリウムを減らせます。
「下処理をしてもカリウムがゼロになるわけではない」「食べる量でも調節する」といった注意点も理解した上で、食事管理に取り組むことが大切です。
下処理の手間を減らす工夫や、惣菜や外食にも頼ることで、調理の負担を軽くすることもできます。透析患者さん向けに栄養計算された宅配食を活用するのもおすすめです。
最後に、カリウムを避けるあまり、食事量が減ったり、野菜を食べなかったりすると、エネルギーやたんぱく質、食物繊維やビタミンなど、必要な栄養素も不足してしまうことがあります。
また、過度なカリウム制限食や、カリウム吸着薬を服用している場合などでは、かえってカリウムが不足し低カリウム血症を引き起こす可能性もあります。医師・管理栄養士の指示に従い、適切にカリウムをコントロールしましょう。
※本記事で紹介している内容は、食事管理の目安としてご覧ください。ご自身に合った内容は、主治医や管理栄養士にご相談ください。

