透析を始めたらカリウム制限があるから、旬の野菜や果物はもう食べられない…いいえ、食べていいんです。
カリウムについて正しい知識を身につけ、安心の透析生活を送りましょう。
好きなものを我慢しない、食べ方の工夫も解説します。
1.カリウムとは?体内での働き
カリウムは、細胞の水分バランスの維持、酸とアルカリのバランスの維持など、体内のバランスを保つ働きがあります。
さらに、心臓や筋肉の機能調節にも関わっています。
血圧の調整にも働くため、塩分摂取の多い日本人は、カリウムをしっかり摂ることが勧められます。
カリウムが不足すると、脱力感、筋力低下、食欲不振などの欠乏症を引き起こすことがあります。
反対に過剰になると、筋肉の収縮が調節できなくなり、手足のしびれや不整脈が生じ、重症化すると心停止に至ることもあり注意が必要です。
カリウムは様々な食品に含まれているため、ふつうの食事をしていれば不足する心配はほとんどありません。
また、腎機能に問題がなければ、過剰摂取になる危険性も低いと考えられています。
では、透析生活ではなぜ、カリウムを気にする必要があるのでしょうか?
2.透析とカリウム-カリウム制限の理由と基準値
食べ物などから摂取したカリウムは、血流にのって全身に運ばれ働いた後、腎臓でろ過されます。
必要な分は再吸収され、余分なら排泄されて、体内のカリウムは常に一定に保たれています。
腎臓の機能が低下すると、摂取したカリウムがうまく排泄できなくなり、過剰に体内に溜まってしまいます。
このため、腎臓病や透析の患者様は高カリウム血症になりやすく、カリウムの摂取量を制限されることが多いのです。
血液検査での血中カリウム(K)濃度の基準値は、3.5~5.0mEq/Lが正常範囲です。
5.0mEq/Lを超えると、「カリウム値が高い」、「高カリウム血症」といわれます。
高カリウム血症にならないように、食事から摂るカリウムの量は、食事療法基準で目安が示されています。
・透析の食事療法基準
<1日当たりの摂取量>2000mg以下
カリウムの摂り過ぎを防ぐために、カリウムを多く含む食品、カリウムが少ない食品を知っておくと良いでしょう。
3.カリウムを多く含む食品・カリウムが少ない食品
カリウムを多く含む食品
海藻、生の野菜や果物、いも類、豆類に特に多く含まれています。
肉や魚介類にも幅広く含まれるため、選ぶ種類、食べる量・頻度で調整しましょう。
また、野菜ジュースやソースなどの液体、ドライフルーツは、成分が濃縮されてカリウムの量も多くなっているため、注意が必要です。
カリウムを多く含む食品の例・摂取量とカリウム値の目安
- 刻みこんぶ:1食分 10g……820mg
- ほうれん草:1株 20g……140mg
- かぼちゃ:1/16個 150g……630mg
- バナナ:1本(可食部)120g……430mg
- じゃがいも:1個 150g……620mg
- 納豆:1パック 50g……350mg
- 鮭(ぎんざけ):1切 120g……420mg
- 鶏むね肉:1枚 200g……740mg
カリウムが少ない食品
- 主食(ごはん、めん類など)
- 加工された食材(こんにゃく、油揚げ、凍り豆腐など)
- 脂質が多い肉類(豚バラ肉、ひき肉など)
- 野菜なら もやし、ねぎ類
- 果物なら りんご、ブルーベリー、レモン
4.野菜や果物も食べてOK!カリウムをへらすコツ
カリウムを多く含む食品でも、簡単な工夫でカリウムを減らすことができます。
野菜や果物は食物繊維やビタミン・ミネラルも多く含み、肉・魚や豆類はたんぱく質が豊富、いも類はエネルギー源となります。
むやみに避けるのではなく、量や食べ方で上手に取り入れることが大切です。
下ごしらえ
カリウムは水に溶けやすい成分であるため、野菜などは水にさらしたり、茹でこぼしたりするとカリウムを減らせます。
さらに、小さく切ることで表面積が増え、カリウムが抜けやすくなります。
- 水にさらすとき:10〜20分さらす、途中で1〜2回水を替え、よく水をきってから食べる
- ゆでこぼすとき:火が通るまで茹でる、茹で汁は使わずに捨てる
食べ方のコツ
- 汁ものやスープは少量に。具のカリウムが汁に溶け出します。めん類のスープは塩分も多いので、飲み干さずに残しましょう。
- 果物は小さめにカットし、量で調整しましょう。缶詰はシロップを控えめに。
- いも料理は、ポテトサラダや煮物でも、下ごしらえをしてから作ると安心です。
- 食品添加物にカリウムが使われていることもあるため、加工食品では原材料表示を確認しましょう。
あわせて読む: はじめての透析食|基本とコツ
5.カリウムの量も計算された、メディクック宅配弁当が便利
主菜と副菜、3つのおかずがバランスよく入った『メディクック宅配弁当』は、透析の食事療法基準に合わせてカリウム値まで計算。
1食あたりのカリウム量を700mg以下に調整(※ごはん200gと一緒に食べた場合)しています。
さらに、エネルギー・たんぱく質・塩分・水分・リン、透析で気になる成分も基準に合わせ、すべてのメニューで量を表示。
1食の摂取量がすぐに分かって安心です。
自宅に届いたら、冷凍庫にストック。
食べたいときに電子レンジで温めるだけ。
カリウムの摂り過ぎも気にならない、おいしいお弁当をぜひ一度お試しください。
まとめ
カリウムはさまざまな食品に含まれている体に必須の成分ですが、腎臓病や透析治療中の方は摂り過ぎに注意が必要です。
しかし、「これを食べてはいけない」ということはありません。
量や頻度、食べ方を工夫すれば、野菜やフルーツなど旬の食材だって、楽しむことができます。
元気に透析生活を送るために、少しだけ意識して、食習慣をととのえていきましょう。
参考文献
- 日本透析医学会『慢性透析患者の食事療法基準(2014)』
- 文部科学省 食品成分データベース