透析患者さんの食事とご家族の食事を毎日別々に用意しようとすると、調理や献立づくりの負担が大きくなりがちです。
本記事では、途中まで一緒に作って味付け前に取り分ける工夫や、食べるときに味を調整する方法、定番メニューでの作り分け例を紹介します。
この記事でわかること
- 透析患者さんと家族の食事を作り分ける理由
- 途中まで一緒に作り、味付け前に取り分ける工夫
- 食べるときに味や量を調整する考え方
- 鍋料理・ハンバーグ・野菜炒めなど、定番メニューでの作り分け例
- 毎日の献立づくりや調理の負担を軽くする方法
目次
1. 透析患者さんと家族の食事を作り分ける理由
透析患者さんとご家族では、食事で気をつけたい内容や食べる量が異なります。
そのため、毎日の食事では、透析患者さんに合わせる部分と、ご家族に合わせる部分を分けて考えることが必要になります。
1-1. 透析患者さんの食事で気をつけたいこと
透析患者さんの食事では、塩分・カリウム・リン・水分の摂り方に配慮が必要です。特に塩分が多い食事は喉の渇きにつながり、水分摂取量が増えやすくなります。
ただし、控えることばかりを意識しすぎると、食事量が少なくなり、エネルギーやたんぱく質が不足してしまうことがあります。
そのため、透析患者さんの食事では、控える成分と、しっかり摂りたい栄養の両方を考える必要があります。
1-2. 家族の食事との違い
ご家族の食事では、年齢や活動量によって必要な食事量が異なります。味付けの好みも人によって違います。
透析患者さんに合わせて全体を薄味にすると、ご家族にとっても塩分を控えた食事になるものの、物足りなく感じられることがあります。
反対に、ご家族に合わせて濃い味にすると、透析患者さんにとっては塩分の摂りすぎにつながります。
カリウムやリン、水分は、腎臓が正常に働いていれば過不足を気にする必要はあまりありません。むしろ、カリウムは生活習慣病予防のためには積極的に摂った方が良いとされています。また、リンはたんぱく質の摂取量に相関しますが、最近ではたんぱく質をしっかり摂るよう心がけている方も多いかと思います。水分も、体内の老廃物代謝のために、たっぷり飲んでその分汗を流すように気を付けている方も多いのではないでしょうか。
このように、透析患者さんとそうでない方では、食事の際に気を付けたいポイントが変わってきます。
そのため、透析患者さんの分とご家族の分をどちらか一方に合わせるのではなく、味付けや食事量を分けて考えることが理想的です。
2. 作り分けを楽にする3つの工夫
毎日の食事をすべて別々に用意しようとすると、調理や献立づくりの負担が大きくなります。
ここでは、家庭で実践しやすい3つの工夫を紹介します。
2-1. まとめて下ごしらえする
最初から別々に準備すると、調理の作業が増えてしまいます。
野菜を洗う、切る、水にさらす、茹でるといった下ごしらえは、できる範囲でまとめて行うと、調理の手間を減らせます。肉や魚も、切る、下味を控えめにする、加熱前に分けておくなど、途中まで同じ流れで準備できます。
野菜は小さめに切って水にさらす、または茹でこぼしをして茹で汁を捨てると、カリウムを減らしやすくなります。
ただし、いも類やかぼちゃなどは、茹でこぼしをしてもカリウムが残りやすい食品です。使う場合は、量や頻度もあわせて調整しましょう。
高血圧やむくみが気になるご家族がいる場合には、必要に応じてサラダや果物を別に添えてカリウムを補うなど、食事全体で調整するとよいでしょう。
2-2. 途中まで一緒に作り、最後の味付けを分ける
具材に火を通すところまでは一緒に行い、最後の味付けだけを分けると、同じ食材を使いながら作り分けが楽になります。
肉じゃが、カレー、シチューなどの煮込み料理、炒め物では、具材に火が通った段階で透析患者さんの分を取り分けます。取り分けた分は、少量の調味料や減塩タイプの調味料で薄めに仕上げ、ご家族の分には通常の調味料やルウを加えて仕上げます。
にんにく、ねぎ、生姜などの香味野菜、ハーブや香辛料、鰹節などだしのうま味や風味を活用すると、塩分を抑えた味付けでも薄いと感じない、深みのあるおいしさを演出できます。
2-3. 食べるときに味や量を調整する
料理によっては、最後まで一緒に作り、食べるときにたれ・ソース・薬味などで味を調整する方法もあります。
お刺身のしょうゆや揚げ物のソースは料理に直接かけず、小皿に出してつけるようにすると使う量を調整しやすくなります。
しょうゆやたれには、レモンなど柑橘類の果汁や酢、生姜、ねぎ、こしょう、ごま油などを組み合わせると、酸味や風味、香りが加わり、塩分を控えながらも満足感を感じやすくなります。料理によっては、少量のマヨネーズを添えるとコクが出て、エネルギーも補うことができます。
七味唐辛子などの辛味は、水分の摂りすぎにならないよう控えめに使いましょう。
汁物では、透析患者さんは具材を中心に取り分けて汁の量を控え、ご家族はうま味が溶け出した汁も十分に味わうことで、食べ方を分けるだけでもよいでしょう。
3. 定番メニューで見る、家族の食事との作り分け
ここでは、家庭でよく作る料理を例に、下ごしらえ・加熱・味付け・食べ方のどこで分けるかを紹介します。
3-1. 鍋料理
鍋料理は、同じ具材を一緒に煮て、汁気やたれの量で食べ方を分けやすいメニューです。
白菜、長ねぎ、きのこ、豆腐、肉や魚などを一緒に煮て、鍋の味付けは、最初から濃くしすぎず、だしの風味を生かして薄めに仕上げます。透析患者さんの分は具材を中心に取り分けます。汁には塩分や水分が含まれるだけでなく、野菜からカリウムが溶け出していることもあるため、汁を多く取らないようにします。具材は下茹でなどの下ごしらえをしてから鍋に入れると、カリウムを減らすことができます。
味が物足りない場合は、食べるときにポン酢やごまだれなどを小皿に少量出し、つけて食べるようにすると、使う量を調整できます。
大根おろし、生姜、ねぎ、レモンなどを添えると、塩分を増やしすぎずに風味を楽しめます。
ご家族は汁を味わったり、たれを好みに合わせて使ったりすることで、同じ料理をみんなで楽しみながら、それぞれに合った食事に調整することができます。
3-2. ハンバーグ
ハンバーグは、タネ作りと焼く工程をまとめ、仕上げのソースや薬味で味を分けます。
玉ねぎはみじん切りにして水にさらし、水気をしっかり切ってから使います。水に溶ける性質があるカリウムは、炒めやレンジ加熱だけでは残ってしまうため、炒めてから加える場合も水さらしをしてから使うとカリウムを減らしやすくなります。下味の塩は控えめにし、ナツメグやこしょうで香りをつけると、薄味でも風味が出ます。
全員分を同じフライパンで焼いたら、透析患者さんの分はソースをかけず取り分け、ご家族の分はケチャップやウスターソース、市販のハンバーグソースなどを好みに合わせて使います。透析患者さんには、大根おろしとレモン汁、または少量のポン酢でさっぱり仕上げるのがおすすめです。洋風に仕上げたい場合は、ケチャップやソースはかけずに小皿に少量を出してつけるようにすると塩分を控えられます。水でのばしたり、刻んだトマトやきのこを加えたりすると、ソースの量が少なくても満足感が高まります。
3-3. 野菜炒め
野菜炒めは、下ごしらえと香りづけを共通にし、取り分けた後の調味料で味を分けます。
キャベツやもやしはサッと茹で、人参などの根菜は少し長めに茹でて水気を切っておきます。フライパンにごま油を熱し、豚肉と下茹でした野菜を炒めます。
ごま油の香りに加えて、生姜、にんにく、ねぎ、こしょうなどで風味をつけます。香りを先につけておくと、塩分を控えめにしても味にメリハリを出しやすくなります。
花椒や山椒などの香辛料を使うと中華らしい香りを足せますが、辛味を強くしすぎると喉が渇きやすくなるため、使いすぎには注意しましょう。
少量の減塩しょうゆや鶏ガラスープの素で薄めに味を整えたら、透析患者さんの分を取り分けます。
ご家族の分には、取り分けた後にオイスターソースなどを加えて仕上げます。香りづけまでは一緒に行い、最後の調味料だけを分けることで、同じ野菜炒めでも味の濃さを調整しやすくなります。
4. 食事づくりの負担を軽くする考え方
作り分けを続けるには、調理の工夫だけでなく、無理をしすぎないことも大切です。
忙しい日や疲れている日は、手作りにこだわりすぎず、手間を減らす方法も取り入れていきましょう。
4-1. すべてを手作りしなくてもよい
毎日の食事をすべて手作りにしようとすると、献立を考える時間も、調理にかかる手間も大きくなります。
忙しい日や疲れている日は、下処理済みの食材や市販品を組み合わせるだけでも、負担を減らせます。
たとえば、主食はパックご飯や冷凍ご飯を使う、主菜は食塩不使用や減塩タイプの缶詰を活用する、副菜はカット野菜や冷凍野菜を使い、必要に応じて水さらしや茹でこぼしを行う。
こうした形でも、調理の手間を減らしながら食事を用意できます。
冷凍食品やレトルト食品を使う場合は、商品によって塩分・カリウム・リンの量が異なります。食塩相当量、たんぱく質、カリウム、リンなどの表示がある食品を選ぶと、栄養計算が楽になります。
4-2. 栄養成分がわかる食事を取り入れる
献立づくりや栄養計算が負担に感じる場合は、栄養成分がわかる食事を取り入れると、日々の食事を考えやすくなります。
メディクック宅配弁当の透析弁当は、管理栄養士が透析治療を受けている方向けに栄養計算した冷凍弁当です。エネルギーやたんぱく質をしっかり摂れるよう配慮し、塩分・カリウム・リンに加えて水分量にも配慮しています。
週に数回の昼食や、調理の時間がない夕食など、負担が大きいタイミングに使うだけでも、献立を考える時間や調理の手間を減らし、気持ちに余裕を持ちやすくなります。
4-3. 家族で食事の時間を楽しむために
食事は栄養を摂るだけでなく、家族で同じ時間を過ごす場でもあります。
毎回の食事で成分計算や作り分けを完璧にこなそうとすると、食事づくりの負担が大きくなります。
作り分けの工夫を取り入れながら、忙しい日や疲れている日はレトルトや冷凍食品も活用し、手間を減らすことも考えておきましょう。
作る方に余裕があると、食卓の時間も落ち着きやすくなります。無理なく続けられる形を見つけることが、家族で食事を楽しむことにもつながります。
まとめ
透析患者さんの食事と家族の食事では、気をつけたい栄養素や味付け、食べる量が異なります。そのため、毎日の食事では、透析患者さんの分とご家族の分を作り分ける必要があります。
ただし、すべてを最初から別々に作る必要はありません。下ごしらえをまとめて行い、途中まで一緒に作ってから味付けを分けたり、食べるときにたれや薬味で調整したりすると、調理の負担を減らしやすくなります。
毎日の食事づくりを完璧にこなそうとすると、作る方の負担が大きくなります。市販品や栄養成分がわかる食事も活用しながら、無理なく続けられる形を考えてみましょう。
食事内容や栄養量は、体格・検査値・透析条件などによって異なります。食事内容に不安がある場合は、主治医や管理栄養士に相談しながら調整してください。
参照・引用元一覧
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
日本透析医学会「慢性透析患者の食事療法基準」
https://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/1229/%E6%85%A2%E6%80%A7%E9%80%8F%E6%9E%90%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%AE%E9%A3%9F%E4%BA%8B%E7%99%82%E6%B3%95%E5%9F%BA%E6%BA%96287-291.pdf
日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014年版」
https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/CKD-Dietaryrecommendations2014.pdf
キッセイ薬品工業株式会社「これだけは知っておきたい食事管理のポイント」
https://www.kissei.co.jp/dialysis/recipe/point.html

