災害が起きると、透析の予定が変わったり、いつも通りの食事管理が難しくなってしまうことがあります。
本記事では、透析患者さんが用意しておきたい非常食や飲料水の目安、災害時の食事の選び方、ローリングストックの考え方について解説します。
この記事でわかること
- 災害時は、透析の予定が変わったり、普段とは違う食事が続いたりすることがあります。水分・塩分・カリウム・リンの摂り方を意識しておくと、食事を選ぶときの目安になります。
- 飲料水や非常食は、最低3日分、できれば1週間分を目安に用意すると安心です。1日あたりの水分量は人によって異なるため、主治医・管理栄養士に確認しておきましょう。
- 冷凍透析弁当はローリングストックとして活用できます。常温保存できる食品もあわせて備蓄しておくと、状況に応じて食事を選べます。
目次
1. 透析患者さんが備蓄しておきたい非常食と量の目安
災害時に備えるためには、どのような食品を、どれくらい用意しておくとよいのでしょうか。ここでは、透析患者さんが用意しておきたい食品や飲料水、量の目安について解説します。
1-1. 3日から1週間分を目安に備えておきたい理由
大規模災害が発生すると、支援物資が避難所に届くまでに数日かかることがあります。また、支援物資として配られる食品は、カップ麺やパン、レトルト食品など、塩分が多いものに偏る場合もあります。
透析患者さんは水分量や塩分の摂り方に気を配る必要があるため、飲料水や食品は最低でも3日分、できれば1週間分を目安に用意しておくとよいでしょう。
1-2. 飲料水の備え方
透析患者さんの1日あたりの水分量は、体重・尿量・透析状況などによって異なります。飲料水をどれくらい用意するかは、主治医・管理栄養士に確認した水分量をもとに考えましょう。
飲料水は、2リットルのペットボトルよりも、500ml程度の小さなペットボトルで用意しておくと、開封後の衛生管理や、飲んだ量の把握もしやすいです。
1-3. 主食・おかず・エネルギー補給食の選び方
主食やおかず、エネルギー補給食を用意するときは、塩分・カリウム・リンの量だけでなく、エネルギーやたんぱく質が不足しすぎないか確認しましょう。
「腎臓病向け」と書かれた食品の中には、保存期の方向けに低たんぱく設計になっているものもあります。
透析治療を受けている方は、成分表示を見ながら自分に合うものを選ぶとよいでしょう。
主食の備蓄
- パックご飯、アルファ化米、無洗米など常温で保存しやすい主食
おかずの備蓄
- 水煮の缶詰(ツナ缶やササミ缶など、塩分無添加や食塩不使用のもの)
- レトルトパウチのおかず(塩分・リン・カリウムの量を確認する)
エネルギー補給食
- ゼリー飲料や栄養補助食品(低カリウム・低リンのもの)
- 砂糖、はちみつ、飴(キャンディー)、羊羹
- MCTオイル、オリーブオイル、ごま油、マヨネーズ(小分けパックが便利)
2. 災害時に食事内容を考えるうえで知っておきたいこと
災害時は、非常食や炊き出しなど、普段とは違う食事が続くことがあります。
また、停電や断水などの影響で、予定していた透析をいつも通り受けられない場合もあります。
そのため、食べられるものを確保しながらも、水分量や塩分の摂り方に注意が必要です。
あらかじめ飲料水や食品を用意しておくと、限られた状況でも食事内容を考えやすくなります。
2-1. 非常食や炊き出しで気をつけたいこと
避難所などで配られる非常食や炊き出しは、不特定多数の方を対象とし、食事制限のない方を基準に用意されていることが多いため、透析患者さんが普段気をつけている栄養成分まで調整されているとは限りません。
乾パンやカップ麺、レトルトカレーなどは、商品によって塩分やリンが多く含まれます。
また、豚汁などの汁物では、根菜類にカリウムが含まれ、汁から塩分と水分も摂ることになります。
提供される食事をすべて避ける必要はありません。
食べられるものを確保しながら、量や組み合わせで調整しましょう。
2-2. 透析をいつも通り受けられないことも
災害が発生すると、停電や断水などの影響で、予定していた透析をいつも通り受けられない場合があります。
透析の間隔が空いたり、治療時間が短くなったりすると、体内に余分な水分や老廃物、カリウムなどがたまりやすくなります。
水分やカリウムの管理が難しくなると、不整脈や心不全、肺水腫などにつながることもあるため、災害時は普段以上に食事や水分の摂り方に注意しましょう。
2-3. 「控えること」と「不足を防ぐこと」の両方を考える
災害時でも、透析患者さんの食事では塩分やカリウムなどを控えることに意識が向きがちです。
控えることだけを考えて食事量が少なくなりすぎると、エネルギーが不足してしまいます。
エネルギーが不足すると、体は筋肉を分解してエネルギーを作ろうとするため、筋肉の減少による身体機能の低下、体力や免疫力の低下につながり、けがや体調不良を起こしやすくなります。さらに、筋肉の分解が進むと細胞内のカリウムが血中に流れ出て、尿毒症や高カリウム血症を引き起こす原因になります。
そのため、災害時の食事では、控えるものに気をつけながらも、必要なエネルギーを確保することが大切です。
慌ただしい状況で毎回細かく栄養計算をするのは難しいため、普段から食べ慣れている食品や、成分表示を確認できる食品を用意しておくと、食事内容を考えやすくなります。
3. 災害時の食事でできる工夫
避難生活が長引くと、自宅で用意した食品だけでは足りなくなることがあります。
避難所などで配られる食事を食べる場合もあるため、できる範囲で食事内容を調整することが大切です。
ここでは、そのために意識したいポイントを紹介します。
3-1. 控えめにしたい食品と比較的おすすめの食品
避難所で配られる食品の中には、透析患者さんが量や内容に注意したいものもあります。
災害時に選び方で迷わないよう、控えめにしたい食品と比較的おすすめの食品を確認しておきましょう。
控えめにしたい食品
- 生野菜、果物:カリウムを多く含むものがあります。特にバナナなどは、避難所で配られた場合は食べる量に注意しましょう。
- 野菜・果汁100%ジュース:水分だけでなくカリウムも摂ることになるため、飲む量を決めておきましょう。
- カップラーメンなどのインスタント麺:スープには塩分と水分が多く含まれます。食べる場合は、スープを飲み干さないようにします。
- 練り物・加工肉(ちくわ、ソーセージなど):塩分やリンが多い食品です。
比較的おすすめの食品
- プレーンなパン(食パンなど)、白米、うどん
- 無塩のクラッカー、ビスケット
- 飴(キャンディー)、果汁を含まないゼリー、羊羹
- 缶詰の果物:ただし、シロップにはカリウムが溶け出しているため、シロップは飲まず、果肉のみを少量にしましょう。
3-2. 調理が難しいときのカリウムに配慮した選び方
普段は野菜を「茹でこぼす」「水にさらす」ことで、カリウムを減らすことができます。
しかし、災害時は断水や燃料不足により、同じような下処理ができないこともあります。
透析患者さんはカリウムを気にするあまり、普段から野菜の量が少なくなりがちです。災害時も、野菜をすべて避けるのではなく、カリウムが多い野菜と比較的少ない野菜を知っておくと、食事を選ぶときの参考になります。
たとえば、芋類、ほうれん草、かぼちゃ、トマト、海藻類などはカリウムが多い食品です。一方で、キャベツ、玉ねぎ、もやし、きのこ類などは比較的カリウムが少ない食品です。
また、水煮野菜を活用する方法もあります。れんこんやたけのこなどの水煮はスーパーでも手に入りやすく、調理の手間を減らせます。使用する際は、汁を切り、可能であれば軽く水洗いしてから使うとよいでしょう。商品によっては塩分が含まれるものもあるため、成分表示も確認しておきましょう。
トマトジュースや野菜ジュースは、水分だけでなくカリウムも多く含まれているため、飲む場合は量に注意しましょう。
3-3. 食事量が少ないときのエネルギー確保
食事量が少なくなったときは、少量でエネルギーを補える食品を知っておくと、食事内容を考えやすくなります。
エネルギー補給に使える食品には、次のようなものがあります。
- 栄養補助食品:商品によって成分が異なるため、カリウム・リン・塩分量を確認して選びましょう。
- 羊羹、水羊羹:常温で保存しやすい食品です。こしあんを使った羊羹や水羊羹などは、カリウム・リンが比較的少なめです。
- 飴、砂糖類:少しずつ口にしやすく、エネルギー補給用として使いやすい食品です。
- オリーブオイル、ごま油などの油脂類:カリウムやリンをほとんど含みません。ご飯やおかずに少量加えるほか、調理にも使えます。
- マヨネーズ:カリウムやリンは多くありませんが、商品によって塩分量が異なります。成分表示を確認して使いましょう。
- ナッツ類:手軽に食べられる食品ですが、カリウムやリンが多いものもあります。素焼き・無塩タイプを選び、食べる量に注意しましょう。
糖尿病を合併している方は、羊羹や飴、砂糖類、栄養補助食品などの糖質の摂り方について、主治医や管理栄養士に確認しておきましょう。
4. 普段の食事にも使えるローリングストックと冷凍透析弁当
1週間分の非常食をまとめて揃え、賞味期限を管理し続けるのは負担が大きいものです。
そこで考えたいのが、普段の食事にも使える食品を少し多めに用意しておく「ローリングストック」です。
4-1. 普段から少し多めに用意するローリングストック
ローリングストックとは、普段から少し多めに食品を買っておき、日常生活の中で古いものから順に使い、使った分を買い足していく備蓄方法です。
特別な非常食をまとめて買い込む必要がなく、賞味期限切れによる廃棄を防ぐことができます。
また、普段食べ慣れている食品を用意しておけるため、災害時の食事内容がイメージしやすいです。
4-2. 冷凍透析弁当を備えるときの注意点
管理栄養士が監修した冷凍の透析弁当は、日常の食事管理だけでなく、ローリングストックとしても活用できます。
普段の食事に使いながら数食分多めに備えておくことで、買い忘れや賞味期限切れを防げます。
ただし、冷凍弁当は電子レンジなどで加熱して食べる商品です。
加熱ができない状況では、常温保存できる食品を活用しましょう。
また、冷凍庫の温度が保てなかった食品や、解凍が進んだ食品の再冷凍は避け、商品の表示に従って取り扱いましょう。
4-3. レトルトと冷凍を組み合わせた備蓄のすすめ
非常食をすべて特別な食品で揃えようとすると、費用や管理の負担が大きくなることがあります。
そのため、常温保存できるご飯やレトルト食品、缶詰などに加えて、普段の食事にも使える冷凍透析弁当を組み合わせて備えておくと、状況に応じて使い分けられます。
電気が使える場合や加熱調理ができる状況なら冷凍透析弁当を活用し、難しい場合は常温保存できる食品を中心にするなど、複数の選択肢を用意しておくと、災害時の食事管理の負担を減らせます。
まずは、普段の食事にも使える冷凍透析弁当を数食分多めに備え、あわせて常温保存できる食品も用意しておくところから始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
災害時の透析患者さんにとって、飲料水や食品を事前に用意しておくことは、非常時の食事管理の助けになります。
まずは、最低3日分、できれば1週間分を目安に、飲料水と成分表示を確認しやすい食品を準備しておくとよいでしょう。
1日あたりの水分量は人によって異なるため、主治医や管理栄養士に確認しておくと、備蓄量を考える目安になります。
避難所などで配られる非常食や炊き出しは、量や組み合わせで調整しながら活用します。
一方で、食事量が極端に少なくなるとエネルギー不足につながることもあるため、必要なエネルギーを確保することも考えておきましょう。
もしもの時の備えとして、また日常の食事管理の負担を軽くする方法として、「メディクック宅配弁当」を活用することもおすすめです。
管理栄養士監修の透析弁当を数食分多めにストックしておくことで、日常の食事管理にも、災害時の備えにも活用できます。
電気や電子レンジが使えない場合に備えて、常温保存できる食品もあわせて準備しておくと安心です。

