透析患者さん向けの献立を考えて料理をする様子

透析患者さんの食事と献立の考え方|1日の目安と献立づくりのコツ

透析患者さんの食事を用意するとき、「ご飯やおかずはどれくらい必要なのか」「毎日の献立をどう考えればよいのか」と迷うことがあります。

この記事では、日本透析医学会の「慢性透析患者の食事療法基準」を参考に、毎日の食事や献立を考えるときのポイントを解説します。

この記事でわかること

  • 透析患者さん向け食事の基本
  • 食事療法基準から見る栄養摂取量の目安
  • 主食・主菜・副菜に分けた献立の考え方
  • 1日分の食品量と朝・昼・夕の3食に割り振る方法
  • 献立づくりを続けやすくする工夫

透析患者さんの食事で知っておきたいこと

毎日の献立を考える前に、透析患者さんが1日にどれくらい食べる必要があるか、目安を確認しておきましょう。

透析食はバランスのよい食事が基本

透析患者さんの食事では、食塩・カリウム・リン・水分などに配慮しながら、エネルギーやたんぱく質など、必要な栄養をしっかり摂ることが重要です。

食塩やカリウムなどを控えることばかりに意識が向き、食事量そのものが少なくなると、エネルギーやたんぱく質が不足するおそれがあります。

エネルギーやたんぱく質の不足が続く、いわゆる低栄養の状態では、体力、筋力、免疫力が低下し、合併症を引き起こしやすくなったり、体調を崩しやすくなったりします。

さらに、ビタミンやミネラル、食物繊維も適切に摂っておきたいところです。ビタミン・ミネラルは、体内のバランスを調整したり、臓器を動かすための部品として使われたり、さまざまな働きがあります。食物繊維は、腸内環境を整え、体内で不要になった成分の排出にも働きます。

このように、「必要な栄養素が過不足なく摂れる、バランスのよい食事」が透析食の基本とされているのです。

次の項目からは、

  • 必要な栄養素の量はどれくらい?
  • 必要な栄養素を過不足なく摂るための「バランスのよい食事」とは?

を解説していきます。

食事療法基準から見る栄養摂取量の目安

日本透析医学会の「慢性透析患者の食事療法基準」では、血液透析患者さんの食事について、次のような目安が示されています。

1日あたりの栄養摂取量の目安
エネルギー 30~35kcal/kg標準体重
たんぱく質 0.9~1.2g/kg標準体重
食塩 6g未満
水分 できるだけ少なく
カリウム 2,000mg以下
リン たんぱく質摂取量(g)×15mg以下

※日本透析医学会「慢性透析患者の食事療法基準」より

たとえば、身長160~170cmの方では、標準体重(BMI:22)は約60kg前後です。

標準体重60kgの場合、1日あたりのエネルギーは1,800~2,100kcal、たんぱく質は54~72gが目安になります。

リンはたんぱく質摂取量に応じて考えるため、810~1,080mg以下が目安です。

必要な食事量は人によって異なります。ここで示す数値は目安として確認し、自分に合った量は主治医や管理栄養士に相談してください。

献立づくりのコツ

透析患者さんの献立づくりのイメージ

必要な栄養素量の目安を確認したら、次に「どのように食べればこの栄養素量を確保できるのか?」を考えていきましょう。

必要な栄養素量を満たすためのバランスのよい食事とは、「含まれる栄養素が異なるさまざまな種類の食べ物を、偏りなく適正量食べること」と言えます。

このためには、1食の献立に主食・主菜・副菜をそろえること、そして朝・昼・夕の3食をきちんと食べることが大切です。

主食・主菜・副菜をそろえる

献立を考えるときは、まず主食・主菜・副菜の3品で役割を分けて考えてみましょう。

  • 主食:ご飯・パン・麺類など。主にエネルギー源になります。
  • 主菜:肉・魚・卵・大豆製品など。たんぱく質を摂る中心になります。
  • 副菜:野菜・きのこ・海藻類など。ビタミン、ミネラル、食物繊維を補います。

主食・主菜・副菜に分けると、「主食でエネルギーを確保する」「主菜でたんぱく質を摂る」「副菜で不足しやすい栄養を補う」と、それぞれの役割が分かりやすくなります。

1日分の食品構成を考える

次に1日にどのような食品をどれくらい食べればよいか、食品構成を考えます。

1日分の食品ごとの量が分かっていると、「主食を1日にどれくらい食べればよいか」「主菜に肉や魚をどれくらい入れればよいか」「副菜で野菜や果物をどれくらい補えばよいか」を考えやすくなります。

例として、身長165cm、標準体重60kgの方の場合で考えてみましょう。

1日分の目安例
主食 ご飯換算で500g程度
肉・魚 140~160g程度
卵・大豆製品 卵1個、または豆腐100~150g程度
野菜・きのこ・海藻類 200g程度
果物 50g程度

※日本透析医学会の「慢性透析患者の食事療法基準」、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」を参考にした食品量の一例です。

必要な食事量は人によって異なります。ここで示す数値は目安として確認し、自分に合った量は主治医や管理栄養士に相談してください。

朝・昼・夕の3食に割り振る

1日の食品構成を決めたら、次に朝・昼・夕の3食に割り振ります。

引き続き、身長165cm、標準体重60kgの方の場合を例に見てみましょう。

献立例
朝食 食パン60g、卵1個または大豆製品50~100g、野菜・きのこ・海藻類50g程度、果物50g
昼食 ご飯180~200g、肉70~80g、野菜・きのこ・海藻類70g程度
夕食 ご飯180~200g、魚70~80g、野菜・きのこ・海藻類70g程度

朝は時間に余裕がない場合が多く、食事量も少なくなりがちです。まずはご飯、パンなどの主食は摂るようにし、主菜は卵、納豆、豆腐など簡単に用意できるたんぱく質源を組み合わせます。副菜には野菜、きのこ、海藻類を取り入れます。

果物をカットしたものや缶詰・冷凍フルーツ、作り置きや前日の残りを添えるだけでもよいでしょう。

昼食を外で食べる場合は主食・主菜・副菜がそろった定食やお弁当を選ぶようにするのがおすすめです。

日中の活動量が多い方は、昼食を必要なエネルギー量を確保する機会として考えることもできます。

夕食は朝食や昼食の内容を見て調整するとよいでしょう。昼食でしっかり食べた日は、夕食をご飯と焼き魚、野菜のおかずなどシンプルな内容にします。朝食や昼食で主菜が少なかった日は、夕食で肉や魚のおかずを組み合わせます。

こうした形で、1日の中で食事内容を見直すことができます。

体調がすぐれないときや、食欲がないとき、忙しくて食事の時間がとれないときなど、食事量が確保できない場合は、間食や栄養補助食品を利用して補う方法もあります。

食事の代わりにするのではなく、1日に必要なエネルギーやたんぱく質を補うものとして考え、成分表示や量を確認しながら取り入れます。血糖値に不安がある場合などでは、主治医に相談しながら補食の内容も考えましょう。

1週間で組み立てる

1日分の食品量を朝・昼・夕に割り振ったら、次は1週間単位で献立の流れを考えます。

毎日その場で献立を決めるよりも、あらかじめ大まかな形を決めておくと、食事づくりの負担を減らせます。

たとえば、平日の朝食はパンと卵料理にする、昼食と夕食で肉と魚が偏らないように振り分けるなどです。

週に1回昼食に麺の日をつくる、平日は食事療法の目安に沿って献立を立てておき、休日のうち1日は食べたいものを楽しむ日として考えるなど、1週間の中でメリハリをつける方法もあります。

予定どおりに食べられない日があっても、失敗と考える必要はありません。朝に食欲がなく、パンだけになった日は昼食や夕食で肉や魚のおかずを入れるなど、前後の食事で調整します。

急に外食になった場合は、次の食事で食塩量や主菜・副菜の量を調整するなど、前後の食事や1週間の中で組み替えて考えます。

献立づくりを続けるための工夫

作り置きや冷凍食品を活用した献立づくりのイメージ

献立の考え方が分かっていても、毎日の食事を用意し続けるのは負担に感じることもあるでしょう。

ここでは、献立づくりを続けるための工夫について紹介します。

定番レシピを決めておく

よく作る定番のレシピを主菜と副菜でそれぞれいくつか決めておくと、食事内容を考えやすくなります。

定番レシピ例
魚の主菜 鮭の塩焼き、カレイの煮付け、サバの竜田揚げ、ブリの照り焼き
肉の主菜 チキンステーキ、豚の生姜焼き、ハンバーグ、肉野菜炒め
卵・大豆製品 卵焼き、炒り卵、白和え、厚揚げと野菜の炒め物
副菜 きゅうりの酢の物、ゆで野菜、きのこのバター焼き、キャベツのごま和え

主菜と副菜の候補をいくつか決めておくと、「今日は魚料理」「副菜は和え物」のように、組み合わせを選ぶだけで献立を決めやすくなります。

食材・調理法・味付けでローテーションする

1週間の中で、食材・調理法・味付けをローテーションで組み合わせることで、献立に変化をつけられます。

  • 食材を変える:魚 → 肉 → 卵・豆腐 → 魚
  • 調理法を変える:焼く → 煮る → 炒める → 蒸す → 揚げる
  • 味付けを変える:しょうゆ → 塩 → みそ → 酸味 → 甘辛

さらに、同じレシピでも主材料を変えたり、同じ食材でも調理法や味付けを変えたりすると、献立のバリエーションを増やすことができます。

  • ブリの照り焼き → 鶏肉の照り焼き
  • サバの竜田揚げ → サバの煮付け
  • キャベツのごま和え → にんじんのごま和え
  • トマトソースハンバーグ → 和風おろしハンバーグ

献立ローテーション例

献立例
朝:卵焼き、ゆで野菜(マヨネーズ)
昼:カレイの煮付け、きのこのソテー
夕:トマトソースハンバーグ、なすの揚げびたし
朝:スクランブルエッグ、果物
昼:豚肉の生姜焼き、キャベツのごま和え
夕:サバの竜田揚げ、きゅうりの酢の物
朝:納豆、白菜の浅漬け
昼:外食でラーメンを食べてもいい日にする
夕:蒸し鶏のみそだれ、青菜のソテー
朝:目玉焼き、ゆで野菜(ドレッシング)
昼:牛肉と野菜のオイスター炒め、にんじんのごま和え
夕:カレイのムニエル、きのこのマリネ
朝:冷ややっこ、キャベツの酢の物
昼:サバのみそ煮、焼きなす
夕:豚肉のしゃぶしゃぶ、きゅうりのサラダ(マヨネーズ)
朝:ハムエッグ、果物
昼:鶏の唐揚げ、青菜の煮びたし
夕:ブリの煮付け、白菜の酢の物
朝:納豆、野菜のソテー
昼:鮭の塩焼き、大根の煮物
夕:家族と外食を楽しむ日にする

朝は主菜に卵と大豆製品をローテーションし、簡単に調理できるものを中心に考えます。副菜はフルーツも組み合わせながら、常備菜も活用し野菜を取り入れましょう。

昼食と夕食は、同じ食材が連続すると飽きてしまうため、主菜の肉・魚を交互に組み合わせるのがおすすめです。さらに、主菜と副菜の調理法や味付けは重ならないようにローテーションすると、飽きのこないバラエティ豊かな献立になります。

作り置き・冷凍食品・冷凍弁当を組み合わせる

毎日の食事をすべて一から用意しようとするのは負担に感じることもあります。

酢の物、ゆで野菜、煮物などの常備菜を週末に作り置きし、平日は盛るだけにしておくと、1品を用意するハードルが下がります。

忙しい日や買い物に行けない日は、市販の冷凍食品やレトルト食品を組み込む日があってもよいでしょう。

利用する場合は、食塩相当量、たんぱく質、カリウム、リンなどの栄養成分表示を確認しておくと安心です。

栄養成分が計算された冷凍弁当などをストックしておく方法もあります。主菜と副菜がそろっているものを選ぶと、献立を考えるときの参考にもなります。

メディクック宅配弁当の透析弁当は、エネルギー、たんぱく質、食塩相当量、カリウム、リン、水分量を1食ごとに確認できます。

レンジで温めるだけで主菜1品と副菜2品がそろうため、ご飯と一緒に食べればバランスのとれた1食になる冷凍弁当です。

管理栄養士監修のこだわりと栄養基準を見る

まとめ

透析患者さんの献立づくりでは、食事制限を意識するあまり、毎食を完璧に整えようとすると負担が大きくなります。

1日にどれくらい食べるかの目安を確認したうえで、主食・主菜・副菜に分けて考えると、毎日の食事を組み立てやすくなります。

食事量が少ない日や外食の日があっても、1食だけで良し悪しを判断せず、その日のほかの食事や数日間の中で調整していきましょう。

定番レシピや作り置き、市販品、冷凍弁当も取り入れながら、続けやすい形で献立づくりを進めていきましょう。

本記事で紹介している内容は、食事管理の目安としてご覧ください。ご自身に合った内容は、主治医や管理栄養士にご相談ください。

記事作成:メディクック宅配弁当運営チーム

参照・引用元一覧